トリモチで雲を作る
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公開日:2025/03/16
春になると草花が芽を吹きます。蘇原持田町から須衛町にかけての権現山(北山)山麓には、他の地域ではあまり見かけない、珍しい花が咲きます。
3月に水がしみ出す谷間の湿地には、モクレン科に属する落葉小高木の“シデコブシ”が咲きます。その花は、しめ縄や玉串につける紙のように見えるところから、この名前が付けられたそうです。花弁は白色のものと、薄紫色のものがあり、木々の芽吹きの前に見る花は、よく目立ちました。東海地方の一部の湿地に自生する固有種であっても、毎年見られる景色なので、珍しい貴重な樹木との認識はありませんでした。
多度神社の祠を祭る権現山(北山)の山頂付近の北斜面、高い樹木の下で日当たりの良くない所に、常緑広葉樹の低木の“ヒカゲツツジ”が群生していました。ツツジという名ですが、同じ常緑広葉樹の低木シャクナゲに近い品種で、薄い黄色い花をつけます。4月の多度神社の祭典で山に登ると、「うすきいない花(薄黄色い花)が咲いている」と見ながらも、花を愛でる心のない小学生にとっては、特別に興味を抱く花ではありませんでした。
2002年4月の権現山一帯の大規模な林野火災で、群生地が消失してからは見掛けなくなり、今となっては貴重な樹木です。
昭和30年代、持田町の子どもたちが興味を持っていた植物は “タカノツメ(鷹の爪)”と“トリモチの木”でした。
この“タカノツメ”は、赤く辛い唐辛子の“タカノツメ”とは全く別のものです。調べてみると、ベンケイソウ科イワレンゲ属に分類される多年生多肉植物の“ツメレンゲ(爪蓮華)”のようです。名前の由来は、仏像の台座の蓮華座に似ているからで、その形状が猛禽類の爪のようなので“タカノツメ”と呼ぶこともあるようです。(出典『ウィキペディア』)
持田の子どもたちは、赤く辛い唐辛子を“タカノツメ”と呼ぶことさえ知りませんでしたから、 “タカノツメ”と言えば、権現山の岩場に自生する多肉植物の“ツメレンゲ(爪蓮華)”のことでした。
権現山の頂上の尾根道を少し西に行き、低木の中を30~40㍍下がった所に大きな岩が露出しています。露出部分は4~5㍍の絶壁になっており、登るだけで足がすくみ、怖い場所でした。そこだけに“タタノツメ”が生えていました。採り始めると、最初は高さに恐怖感がありますが、しだいに慣れてくると、怖さも薄れ、夢中で採種しました。
家には持ち帰りましたが、採ることだけが楽しみで、鉢に植えて栽培するなどした記憶はありません。
トリモチは、鳥や昆虫を捕まえるために使うゴム状の粘着性の物質で、モチノキやクロガネモチの樹皮を加工して作ったようですが、持田町の子どもたちは木に宿る“ヤドリギ”を“モチノキ”と呼んでいました。
権現山の登山道を、目を凝らして探しながら登ると、マツの木に“ヤドリギ”を見つけることができました。登山道から手が届きそうな低い所に見えていますが、急斜面を下りてマツの木の根元まで行くと、“ヤドリギ”は意外に高い所、4~5㍍上に宿っています。マツの木、特にアカマツの木は樹皮が滑りやすく、枝も少なくないので、太ももとかかとでマツの幹を挟み、両手を使って登ります。腕力と脚力、度胸に経験も必要で、身軽で木登りが得意な者が挑み“ヤドリギ”をもぎ取りました。
“ヤドリギ”につく実をちぎり、つぶして、果肉を口に入れてかむと、ガムのように粘りが出てモチになります。その実は“サンショウの実”より小さく、果肉は極めて少量ですから、“チューインガム”の量ほどためることさえ容易ではありません。まして鳥を捕まえるワナの量にまで増やすことは不可能です。
口で噛んでいるモチを米粒ほど指に取り、メンソレータムを混ぜてもむと、綿菓子のようになりました。子どもたちは、それを「雲になった。雲ができた」と言って息を吹きかけ、飛ばして遊びました。
岐阜かかみがはら航空宇宙博物館付近の落葉広葉樹の高木に宿るヤドリギ
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