井戸にスイカがこぼれ落ちた‼
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公開日:2024/09/03
蘇原持田町から蘇原小学校(現蘇原第一小学校)まで約3㌔もありました。ゴルフ場(岐阜カンツリー倶楽部)が建設される以前は、学校からの帰り道の途中飛鳥町から持田町まで、権現山のすそ野の低い山々、山から湧き水を集めて流れる小川、洞に広がる水田、その間を曲がりくねる約1㌔の山道を歩きました。
記録を調べると、昭和30年代日本の最高気温は、ときには35度以上の猛暑日もありましたが、多くは30度以上の真夏日でしたから、今年の厳しい暑さと比較すれば、まだ過ごしやすかったように思います。しかし通学途中の子どもたちにとっては、とくに初夏から秋の晴天の日には、喉が渇きます。水筒は持って行きませんでしたし、通学途中に水の飲める所はありませんでした。
顔や頭にいっぱいの汗をかいて帰って来ると、同級生のお母さんが、「今日は暑かったね。水でも飲んで帰りんさい(帰りなさい)」と声をかけてくれます。当時、持田町には水道は普及していませんでしたが、その家は井戸水をモーターで汲み上げて自家用の水道にしていました。蛇口をひねると生暖かい水が出ると同時に、モーターが動き始め、少し時間が経つと、冷たい水に変わります。そのおいしい水を飲んで、顔を洗って、一休みしてから、また歩いて帰りました。水道をうらやましく思いました。(小川徳水談)
茶碗、鍋釜、野菜などを洗う生活用水には小川の水を使いましたが、飲料水や炊事の水は井戸水を使っており、どこの家にも井戸がありました。滑車を使うツルベや手押しポンプで、井戸水を汲み上げました。
手押しポンプは、井戸の底からポンプまでの導水管は鉄管を使いますが、鉄管は高価なので代用品として真竹(まだけ)の節を抜いて管に作り、ポンプにつなぎます。竹管は1年も経たないうちに腐ってしまいますので、時々交換せねばなりません。ポンプの外側は鉄の鋳物で作られていましたが、ピストンは木製です。木製ピストンの回りに皮革を張り、空気が抜けないようにしてあります。その真ん中には革製の弁があり、ピストンを上下に動かすと、革製の弁が開閉し、水が汲まれました。
この手動ポンプは、少し使わないと皮が乾き、すき間ができ、水が落ちてしまいます。そんな時は、“迎え水”と呼ぶ水を入れ、皮を湿らせ、膨張させ、密着させて、水を汲み上げます。
ポンプの水の出口には、水といっしょに出る砂や小石や手押しポンプの剥がれた鉄さびを取り除くために、木綿の袋が付いていました。
井戸水の水温は年中15度程度で、現代ならば決して“冷たい”とはいえないですが、冷蔵庫が普及していない当時は、大変冷たくおいしい水でした。
スイカ、瓜などを竹籠に入れたり、風呂敷に包んで、井戸につるし冷やしました。扱いが悪いと籠からスイカがこぼれ落ちてしまいます。紐をつけたバケツを井戸底に下ろし、いろいろ動かしてチャレンジしますが、大きなスイカはうまくバケツに入らず、拾い上げるのは難しく、容易ではありません。いろいろ工夫しながら悪戦苦闘し、やっと拾い上げると、ほっとしました。(小川輝良さん談)
電気炊飯器のない時代ですから、食事ごとのかまどでの炊飯は面倒なので、1日分、2日分をまとめて炊きました。冷蔵庫がなく、お櫃ごと涼しい井戸に入れて保存しますが、時間が経つと独特な嫌な匂いを発しながら、ご飯が腐りはじめます。そんなご飯は“モッタイナイ”ので、水やお茶で洗って食べました。ご飯が少し腐った程度では、お腹は痛くはならない、毒ではないと言い伝えられていました。(小川豊一さん談)
昭和30年代中期に、持田町を流れる正福寺川の水を使った簡易水道が敷設され、次第に井戸は使用されなくなり、多くの井戸は埋められました。
“イドゴ”と呼ぶ土管製の井戸枠。井戸穴の上には使いやすさと安全のため“井戸枠”を置きました。石製もありましたが、多くは直径1㍍程度の土管を使いました
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