麦畑の歴史
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公開日:2022/06/15
麦には、麦ご飯にする大麦、パン・ラーメン・うどんにする小麦、東欧やロシアなどの寒冷な地方で栽培が盛んなライ麦、飼料にするエン麦などがありますが、各務原で多く栽培されてきたのは、うどん加工用の小麦や大麦でした。晩秋に麦の種をまき、冬から春に成長し、6月ごろ実りを迎え、収穫しました。
蘇原持田町の小川豊一さんと小川輝良さんに聞いた話をまとめました。
畑では夏はサツマイモを、冬には麦を、水田では夏は稲を、冬には麦を栽培していました。昭和30年代までは、「麦秋」(初夏のころの意味)といわれるように6月に黄金色の農地が広がっていました。
9月から10月にサツマイモの収穫が終わると、イモズルを麦の肥料になるように土中に埋め込みながら、畑を耕し、畝を作り、麦粒をまきます。麦粒は直まきで移植はしません。
水田では、10~11月に米の収穫が終わると、直ちに田を耕し、麦をまく準備をします。麦は水を嫌い、乾燥を好むので、水が湧き出る沼田では栽培できません。流れ込む水が少ない乾いた田では、排水用の溝を作る程度ですが、水の多い田は、排水のために溝を掘り巡らし、その土を土手状に盛り上げて畝を作ります。
耕運機やトラクターのない時代でしたから、全て人力で備中くわを使い手作業で耕していたので、極めて重労働でした。サツマイモの収穫・出荷、刈り取った稲の乾燥・運搬・脱穀・モミすり・選別などの作業と平行して作業を行わねばならず、大変忙しい中で麦の種まきを行いました。
冬になり麦は発芽し、芽が少し伸びると、根の張りを良くするために、霜柱などで浮き上がった芽を足で踏みつける”麦踏み”を行いました。
2月ごろには“土入れ”といい、スコップのような農具で、すくい上げた畑土を麦の芽にかけ、丈夫な茎を育てました。
化学肥料はありませんでしたので、堆肥や灰や人糞などが施肥されました。
5月はサツマイモの苗の植え付け時期です。畑では麦の根元の畝の間にイモの苗を植えました。麦わらが強い日光を遮るので、根のないサツマイモツルを挿し芽するには好都合でした。
6月になり麦が黄色く色づくと,梅雨期の晴れの日を見つけて、”ノコギリ鎌”を使って刈り取りました。ナイロンやビニールの農業資材がない時代です。収穫した麦を雨で濡らさないように、急いで自宅の軒下まで運び入れます。
天気を見ながら足ふみ脱穀機で、麦わらから麦粒を脱穀します。米は脱穀すると殻をかぶったもみ米になりますが、麦は脱穀しただけで殻が取れて麦粒になります。ただ、濡れているとこの作業がうまくできません。
残った小麦の麦わらは屋根材料にします。かやぶき屋根のカヤは、ススキやヨシが使われますが、この地方ではカヤの入手が困難で、麦わらで代用していました。ただ、麦わらは耐久性に乏しく、3~4年でふき替えねばなりませんでした。
大麦のわらは弱く折れやすいので、屋根材料には使えず、肥料として使いました。
麦を刈り取った水田は急いで耕し、水を入れて6月中旬に始まる田植えの準備をしました。
収穫した小麦は、製麺所に出荷しましたが、その代金を受け取るのではなく、必要な時々に“うどん”をもらい、自宅で消費するという方法でした。
大麦は精米所に持って行き、フスマを取り除き、潰して、押し麦に加工して、麦ご飯にして食べました。
昭和30年代に食糧事情が良くなると、この地方では麦の栽培は減っていきました。
収穫間近の麦畑
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