３日間のスマホ教室

公開日：2021/09/23

「オー‼スマホの勉強を３日間か、よし行こう」広報に掲載されている文面を見て、私は思わず期待できるなにかを描いて興奮してしまいました▼７月６日(火)、スマホ教室当日です。小雨の中、自動車で岐阜各務野高校正門に行くと、進んでいく先々で、男子高校生が手で合図をして、駐車場まで誘導してくれました。玄関に着くと、今度は女子高校生が雨傘と下足を受け取り、手際良く番号札と交換してくれました。エレベーターで３階に行き検温と手指消毒を受け、受付名簿に名前を記し、席まで案内していただきました。一度も来たことのない所へ、何の不安も感じず進んできたことに驚きました。先生と生徒のこうした一連の心配りに私は感動し、ありがとうの拍手を心の中で送りました。そして「高校生としっかり交流し、勉強をしよう」と、自分に言い聞かせました▼開始時間になり、私の側に首から名札を掛けたＫ君が挨拶して座りました。高校生主導の開講式では、自作のテキストに従って進めていくこと、講師を信頼して３日間学んでくださいとの素晴らしい言葉がありました。講師は全員ビジネス科の３年生とのことでした▼Ｋ君とのマンツーマン講座が始まりました。高校生が自分たちで作り上げた「スマホ教室テキスト」は、Ａ４版用紙５０枚ほどで、ページを開くと「今日は第１章、第２章と項目に従って一緒にやっていきますので、お願い致します」と、声を掛けていただきました。かなり緊張している感じで「分かりました」と言った私も、大丈夫かなと焦り、慌てて深呼吸をして落ち着きを取り戻しました。Ｋ君の助言を受けながら、アンドロイドの順序に沿って操作していきました。特に行き詰まることもなく、スムーズに第１章を終えることができたので、２人で休憩時間を取ることとしました。Ｋ君が２階にあるトイレの案内までしてくれました▼教室に戻ったとき、私は新聞記者からインタビューを受けました。「参加した理由は何ですか」と聞かれ「孫がどんどんスマホを使いこなしていくので、置いていかれないよう勉強に来ました」と、正直に答えました。帰宅して妻にこの話をすると、「あなたは取材の的によほど適しているのね」と、過去の取材例と重複させて、妙な方向で褒められてしまいました。７月８日の新聞には、指導するＫ君と受講する私の言葉が丁寧に記載されていました▼Ｋ君に指導を受け「え‼なるほど分かった」と、納得し喜ぶ瞬間ができました。テキストを予定より早く終了し、私はスマホ教室に来た２つの理由を話してみました。一つは、孫との交流にプラスになると思ったこと、もう一つは、３年前にスマホを購入し、身近な人に少しずつ教えてもらいながらＬＩＮＥ交換までできるようになって、知人からは何でも操作できるんだと言われることが多くなりました。しかし、上面は何でも知っているように見えても、基礎から教育を受けていない私は、ちょっとしたトラブルになると右往左往してしまい、バンザイの状況に何度も遭いました。そこで、基礎を覚えようと、この講座を受けに来たと話しました▼Ｋ君は驚いた様子でしたが「分かりました。聞きたいことを何でも聞いてください」と、元気になる言葉を掛けてくれました。あらためてテキストから、私の不得意な箇所を重点的に繰り返しやってみることとしました。テキスト以外の事柄もＫ君は詳しく教えてくれました。スマホ教室２日目、３日目は、項目から私の勉強したい教科に絞って指導していただきました。テキストから外れてパスワード、メールアドレスのことなど、無理な問い掛けにもＫ君は真剣になって教えてくれました。こうして私たちはすべての教科を終えることができました▼時間に余裕があったので、Ｋ君に６０年前、私はどんな高校生だったのか話してみることにしました。入学と同時にラグビーフットボール部に入部し、毎日の猛練習と夏休みの合宿および自主練習を乗り越えて、秋には１年生で一人だけレギュラー選手になれました。３年には主将として国体、インターハイの長野県代表を勝ち取りました。私の人生の出発点は高校の夏休みにあったのではと思っています。スポーツでも、夏休みにその基礎を作り上げることが勝者に近づけるのではと思います。Ｋ君は私の話をどう受け止めてくれたでしょうか。講座の修了証に記載されている「おじいちゃん・おばあちゃんのスマホ教室」は、私にとって、勉強を通じて先生方や高校生から思いやりをいただいた３日間となりました。

(つつじが丘　酒井忠雄)