戦後の農業機械“とおす”と“石油発動機”
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公開日:2021/09/09
昭和40年代まで使用されていた“もみすり機”と“石油発動機”の話です。
“もみすり機”のことは“とおす”と呼んでいました。微妙な隙間を空けた回転速度の異なる2本のローラーの間にもみ米を通して、こすり剥ぎ取ったもみ殻を風で吹き飛ばし、玄米を取り出し選別する機械です。
その“とおす”(もみすり機)を動かす動力は、石油発動機です。石油を燃料にしていますが、ディーゼルエンジンではありません。始動のときだけ高価なガソリンを使いますが、動き始めると燃料を安価な石油に切り変えて運転を続けます。
ずうたいだけは大きく重量はありますが、1気筒のエンジンの回転数は低く、出力馬力も小さく、不安定なピストン運動を安定させるため大きな“はずみ車”を持ち、布製のベルトで“とおす”とつないで動かしました。
点火プラグはありますが、バッテリーはなく、手動で“はずみ車”を回して始動させます。消音マフラーもないので「バン・バン・バン・バン」と大きな音が響き渡ります。
ピストンやクランク軸には、焼き付き防止のため潤滑油を点滴のように一滴ずつ垂らします。
戦後、蘇原持田町内の農家は“もみすり組合”を作り、高価ですが作業効率の良い、外観は木製(内部の構造は不明)の大型の“とおす”と“発動機”を共同で購入しました。
シリンダーの吸気と排気バルブ、点火プラグの発火タイミング、ピストンやクランク軸に垂らす潤滑油の調整、冷却水の管理など、今のエンジンとは違って運転には専門的な知識が必要で、急に起こるトラブルには調整や修理が欠かせませんでした。
その任には、小型飛行機のパイロットライセンスを持った小川健三さんや、戦前に飛行機整備士だった小川喜一さんなど、機械の知識を持った数人が当たりました。
回転軸の軸受が破損したときには、竹やぶから切り出した竹の節の部分を加工し、“竹製軸受”で応急修理をしたという話が伝わっています。
もみ米の脱穀と乾燥を終える11月頃から、“とおす”と“発動機”を手押しの専用運搬車で運び、1日に3~4軒の組合員の家を順番に回って、もみすり作業を行いました。
機械の運転には担当者が当たりますが、もみ米の運搬、“とおす”へもみ米の投入、もみ殻の撤去、できた玄米の収納などの作業は、当家の家族が総出で当たり、人手が少ない家は親戚や近所の人が手伝いました。
“はずみ車”を持つ1気筒の石油発動機(小川輝良氏蔵)
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