パンコは真剣勝負
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公開日:2024/12/10
1957(昭和32)は、バネを仕込んだ踏板に乗ってジャンプする“ホッピング”、翌年には丸く輪につないだポリエチレン管を腰のあたりで回して遊ぶ“フラフープ”、1960年(同35)には黒色のビニール製人形の“ダッコちゃん”が日本全国で爆発的にブームとなりました。
当然各務原でも流行し、蘇原持田町にも持っている子どもがいました。ときには借りて遊びましたが、それは他人のオモチャなので遠慮もあり、短時間で返さなければなりません。うらやましくて仕方がなく、子どもたちは親に「みんな持っているから、買って欲しい、買って欲しい」とせがみました。
調べてみると、子ども用のフラフープは当初200円で販売していたようですから、それほど高価なものではなかったのですが、私の家ではなかなか買ってもらえませんでした。家計に余裕がなかったのでしょう。類似品が売り出され、価格が下がってきてからやっと買ってもらいました。その頃には流行は最盛期を過ぎていてあまりうれしくなく、少しは遊びましたがすぐに飽きてしまい、遊ばなくなったと記憶します。
その頃、男児が一番真剣に遊んだのが“パンコ遊び”(“メンコ”と呼ぶのが一般的)でした。“義経”“弁慶”などの武者絵、“月光仮面”“赤胴鈴之助”などの人気キャラクターが書かれた厚紙のカードで、直径4~5㌢の円形のもの、直径10㌢程度のもの、トランプカードを少し細長くしたような四角のものなどがありました。
遊び方は、地面に置いて相手のカードに強くぶつけたり、すぐ近くに強くたたき付けたりして、相手のカードをひっくり返すと自分の物としてもらえるルールでした。
普段は、親から小遣いはもらえず、蘇原持田町には商店が一軒もなかったので、新しいパンコを手に入れるには、ゲームに勝つしか方法がありませんでした。単なるゲームではなく、子どもにとっては真剣勝負の場でした。
そこで、地面に置いたときにすき間ができないように、パンコの周りを少し曲げる。油やロウを塗って重くするなど、子どもなりに“強いパンコ”になるようにいろいろ工夫をしました。
当時、子どもの上着はファスナーのついたジャンパーはなく、綿の入った筒袖の羽織のような防寒具を着ていました。これを着てパンコをすると、風を起こしやすいのです。パンコを裏返すのに好都合なよう、裾を開けて行なうなど「こずるい」方法を使っても勝ちたい遊びでした。
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